「育ち盛り」
横浜の空手道場「拳道会」
稽古通して礼儀指導 週4回、小学生130人が参加
「あいさつと返事は大きな声」(心得3カ条)
道場内には空手着のすれる乾いた音と「オウ」と叫ぶ子供たち気合の入った声が響き渡る。声には覇気があり、息もぴったり。表情も真剣そのものだ。
横浜市保土ヶ谷区の空手道場「拳道会」(李相徹館長)。毎週四回、小学生を対象にした少年部の指導が一時間半にわたって行われ、百三十人ほどの子供たちが練習に励んでいる。
「しっかりとあいさつすることを徹底して指導しています」と李館長。子供たちは道場を訪れると「お願いします」と大きな声であいさつする。「今は大家族の中でもまれる子供は少ない。親も仕事で外に出て、しつける時間が取れないようだ」(李館長)。あいさつができる子供にすることが、ここの「最重要課題」。強くなることよりも優先されるという。

真剣な表情で稽古に励む子供たちを指導する李相徹館長
=横浜市保土ヶ谷区の拳道会
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稽古の時間も、道場の端に準備ができた子供たちからすわり、走り回って騒ぐ姿は見られない。座り方、礼の仕方などきちんと決まりがあり、それができない子供は稽古を中断してもやり直しをさせられる。
礼に始まり礼に終わる武道の世界。子供に礼儀を覚えさせたい親が入門させるケースも少なくないという。「親もそれを望んでいるし、われわれも礼儀はしっかりしつけたい」(李館長)。子供たちをたくましくすること以外にも、親からの期待は大きいのだ。
しかし、相手は腕白盛りの子供たち。難しい面もある。常に意識して子供たちに接しないと、子供たちはすぐにあいさつのできなかったころの状況に戻ってしまう。
そこで同道場では道場訓とは別に、「少年部の心得」として、あいさつと返事は大きな声▽起立、整列、退場は気合を出す▽自分の靴、道衣は整理する−の三カ条を作り、毎日、稽古の前に全員で斉唱する。「子供たちには分かりやすい言葉で伝えないと」(李館長)と工夫を凝らす。
練習は級が上の子供が前に立ち模範となって、準備運動や基本的な型を繰り返していく。
しかし、声を出すのは全員の仕事。「声が小さい」「○○、集中できてないぞ」と李館長は声をかけながら、子供たち一人ひとりを指導していく。子供たちがやっている練習にもきちんと規律があり、見ていて気持ちが良い。「だらだらしていたら精神鍛錬にならない。それは武道じゃない」(李館長)という。
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約一時間半の稽古を終えても子供たちは元気一杯だ。稽古前とは打って変わって、仲間同士、道場内で楽しそうに話す姿が見られる。小林辰也君(九つ)は「厳しくて最初はやめたいと思ったけど、今は黒帯まで続けたい」とにっこり。今城美子さん(十一)は「空手を使うといけないから、学校で男の子とあまりけんかしなくなった」と話す。
拳道会には近くにある四つの小学校から子供たちが通ってきており、学区を越えて子供たちの触れ合いの場にもなっている。空手を離れれば、そこにはどこにでもいる普通の小学生たちがいた。稽古中の真剣な表情と、終わった後の無邪気な笑顔。時と場所に応じて二つの顔をしっかりと使い分けられる子供たちの姿が頼もしかった。
(西山典男)
(写真・本文ともに、産経新聞神奈川県地方版 平成15年(2003年)1月29日 26面より転載)