第1位 第12回全国選手権大会 優勝決定戦

黒川 豪(東京) VS 李光成(総本部)

 

 

 

 

 第12回大会はまさしく決勝戦の死闘が物語るように波乱の大会であった。

 優勝候補が相次いで敗れる中、決勝に勝ち残ったのは2連覇を目指す黒川と、新進気鋭の若手 李光成であった。

 身体能力の高さを生かし危なげなく勝ち上がってきた黒川と、近年、つねに上位を脅かしてきて初めて決勝に勝ちのこった李との戦いは全国大会の歴史に残る死闘となった。

 

 

 序盤は黒川がテンポの良い攻撃からポイントを連取する。

 李もすかさず取り返す。

 パワー、スピードで黒川が上回るとすれば、李の良さは試合経験の豊富さ、試合運びのうまさである。

 突きを出すタイミングに優れていて後ろに引き下がらない闘志が持ち味。李は高校生時代の第6回大会から全国に積極的にチャレンジし経験を積んでいた。9回大会からは徐々に頭角を現す。当時圧倒的な強さを誇っていた5強(清水、高山、玄、石山、安田)にあと一歩と迫る戦いを何度も演じていた。その過程で李は試合テクニックを身につけ、まさに百戦錬磨として磨きをかけていた。

 そんな戦いぶりが見事に生かされた李の戦いぶりであった。

 

 

 黒川は強烈な下段蹴りからの連続攻撃のパターン、李は相手の攻撃にあわせて上段突きを繰り返すパターンで壮絶なポイントの取り合いとなった。

 上段突きで李がリードすれば、黒川が追いつき、黒川がリードすれば李が追いつくという展開は決着がつかないまま、延長、再延長と続いた。

 

 

 再延長に入るとやや疲れが見え始めた黒川に隙が出てくる。その隙を見逃さなかったのが李の経験の豊富さか、足払いからの下段突きで技ありを奪って大きくリードする。

 残り時間を考えると李の初優勝かと誰もが思った瞬間、そこに黒川の怖さが待っていた。李の上段突き攻撃が出てくるところを見事に見切り、投げを決め下段突きで技ありを取り返した。【ウォーッ】と会場が沸くなか、それでも有効ポイントが一つ足りない黒川は怒涛のように攻める。最後の有効ポイントが入った瞬間、試合終了のブザーがなった。

 

 

 終わってみればポイント上は並んでいた。審判団が協議するなか異例の再々延長戦への突入が告げられた。

 

 肩で息をし明らかに疲労が見えてきた黒川にもう一度隙が出来たのを李は見逃さなかった。出会い頭に黒川の中段に突きを決め有効を奪ったとき、1分間の再々延長戦は終わりをつげた。李の初優勝の瞬間だった。エンドレスの戦いを繰り広げた両雄に会場は大きな拍手を送った。

 

 ニューチャンピョン李光成はこうして誕生した。

 

 

 表彰台に上った選手の道衣を見ればその血が死闘を物語っていた。

 李にとっては黒川は長い間越えられなかった壁の一人でもあった。

 李の総本部入門当初、当時の黒川はピークに突入し身体ともに一番絶好調の時期でもあった。

 練習で組手をするたびに、投げのうまい黒川に幾度も投げられては苦杯を味わっていた李であった。

 先輩としていつもアドバイスをくれ、激励鼓舞してくれた黒川は尊敬する先輩でもあった。

 その黒川と全国大会の決勝戦で対戦でき、また勝利を収めることが出来た李は満足感でいっぱいだった。

 試合後の黒川の表情も後輩の成長に満足げな笑みを浮かべていた。

 

 

 黒川VS李の12回大会決勝戦はこうして幕を閉じた。多くの人に語りつがれるこの戦いはまさしく全国大会屈指の名勝負であった。